大阪の万国博覧会に行くって事態になった時に、体においてもキャロに不思議なことが起こっていたんだ。中一の二月に始まっていたはずの生理が四月限りで、ピタッと止まって、母に言うと、それも心配だから、行くのは、やめなさいって。ここまで、嫌がってるのには、伯母と仲良くなるのを、好まないっていうのもあったろうね。大佐であったことも白状したし、佐世保にいる姉のもとに、脇田大佐について、回想する、お手紙も来ていたってことを、ようやくねえ、話してくれるんだ。なんと、脇田大佐っていう人ね、位〔くらい〕の低い者を特に、可愛がって、声を、かけていたって・・・。キャロ嬉しかったよ、わかったんだ。命の尊さも十分にわかってた大佐なんだ。だけど、戦争は終わらせることが不可能な、地獄に来ていた。君達に死に出〔しにいで〕の旅立ちさせるのは、決して、本望ではないんだよ・・・。口には出さないけれど、これを、みんなが、もう分かっていたんだね。そこに、居る兵士達が、みんな、同じ位なんだということに、気がついたんだ。そして、一蓮托生という恐怖の極みの駆逐艦、霜月だよね。キャロには、わずかなことしか、出来ないんだけど、脇田大佐がこの娘、ミチ子を幸せにしてあげたいっていうこころを、天国から、投げかけたっていうの、とても看過することはできないんだ。なぜなら、脇田大佐の妻キミと最後まで一緒に棲んで、その最期を看取った娘だったから・・・。