エメラルド・ウーマン《深窓の令嬢ダブリュー編》〔56〕自分の生活拠点をひとまずインターネットカフェに設定し、毎日霞を食べて暮すような段取りにしてみます。金銭的に切羽詰まっているものの、今回まではボーナスが支給されて里子は大船に乗った気持ち。娘達の自立に手を合わせます。しかしこの時、まだ里子は下の娘が大変なことに巻き込まれようとしていることに気が付けず、毎日放浪しつつ仕事ばかりを追っていられる身分ではなかったのです。十八歳から十九歳の娘の心はまるで糸の切れた凧。このことはもう少しして話しましょう。とにもかくにも里子は少々乱暴なことを頭に描いていたのは事実で、川柳道で平成の第一人者になろうとそう粋がっていたのです。しかしその思いは脆くも崩れ去ります。とある投稿集を紐解いていた瞬間...次のような句を見つけるのです。ちりめんの 一尾一尾に 小さき目 鮮やかな光景が浮かんできます。何かこう庶民の鋭い視線のようなもの。時代の先鋒として存分に戦える雄々し過ぎる庶民の幕開けにならないか?作者は三浦武さん。長崎県の人物で里子の目がしらが熱くなってくるのです。私は何か重大な忘れ物をしてはいまいか?この、目だ。