西🏝姫瑠のアディショナルタイム(347)

 私の母親は強い女性だった。五右衛門風呂から上がるときも、タオル一本首に掛けて姿を現す。2階へ平然と上っていく。私たちは父が9歳から育った家の2階を間借りしていた。私が幼い頃、事件を起こし、そのアパートには棲むことは難しくなり、母も苦渋の決断を出し、父の家の2階を棲み家とした。しかし、母が大嫌いな言葉は郷に入れば郷に従え…っていう諺であたしも自由に育成されはしたが、人様に容易に迎合することはなかった。クールで一匹狼型の母に近寄るのは、金を貸して欲しい人間だった。こともあろうか、母は貸していた。私は驚愕する。ほぼ返らないお金だと幼な心にも分かっていた。母は寂しかったに違いない。だから貸した。お金が戻らないことは承知だった可能性は高い。私は生まれてこのかた、人にお金を貸したことがない。母を全面教師にして見て来たからだ。