デニム・ブルーママン15の11

 ひとつ、私の心象には、バレーで惨敗したときこの子には転身が現れるのでは?っていう期待があったこと・・・バレーだって素晴らしいし、否定はしませんが、生まれながらに持っている語彙にまつわる仕事能力や音感教育を受けた成果に繋がる道のりを模索してくれたらな?があったのです。期待通りにと言っては過酷ですが、一回戦であっけなく敗退してあの子がバレーへの熱意が拉がれてしまったことを私も冷静に受け止めていました。敗戦の分析も欠かさないあの子でしたが、意外に立ち直りは早くて、二学期になる前の登校日に体育館で女子ふたりがピアノ演奏を披露する場面に立ち会って、かつてない衝撃を受けたようです。三年生全員の生徒を体育館に集めての音楽会だったようで、家に帰って私にピアノピースを購入に浜の町の楽器店に行きたい!!ってせがむのです。ひとりの女子はクシコスポストを、そしてもうひとりの女子が花の歌を披露したそうで、早速二曲を自分で練習したいなって。ひとりで弾けるようになるの?と半信半疑でしたが、譜面を読めるから出来るかも?と私はお金を渡したのです。そして妙なことをのたまうのです。クシコスポストは労働者が走る忙しさだけど、花の歌は恋の歌じゃあないかしら?って。しつこく絡みつくような旋律が女子の情愛を示しているって。中学校での音楽会が容子の人生を変えたといっても過言ではない。花の歌を弾いた女生徒は幼い頃から家へあがらせてもらって親しくしていた生徒でした。中3の二学期はバレーボールの夢が萎んだ替わりに、メロディを伴って補完と変革に訪れていたのです。