デニム・ブルー・サファイアママン7の9

 二階のキッチンが板張りで私のお気に入り。三畳ほどもない狭さ。浜の町アーケードまで容子とバスに乗って行きます。出産するまでまだ少し時間もあったことで台所に取り付けたいボードがあったのです。そこには穴がついてて、フックを一杯掛けられる。オタマなど大事な用品を掛けることが出来るので重宝します。今のように百円ショップなどがない時代。早速容子は驚きの声を上げる。凄い!!って。このボードがそういうことの為に小さな穴があらかじめ空いてたのね?って。一年前にこの子を連れてちょっと目を離した隙に、アーケードの中で迷子にしてしまったあの事件を思い出す。本当に一瞬の出来事だったのです。容子も背の高い大人たちの混雑で私を見逃し、私も手がちょっと離れた隙に、容子を見失う。あの子はわんわん泣いて派出所に連れて行かれて、家具屋さんの二階に急きょ預けられて、私はそこへ辿り着くまで必死の形相だった。家具屋さんの片隅で待っていたあの子の手をしっかり握りしめたときは感謝で一杯でした。一瞬でも手を放してしまった心の隙間。そしてちゃんとすぐに見つかってこの子を届けてくれた派出所の方の好意。有難くて、帰ってすぐに旦那に話したこと・・・緊急のことが起こればそのたび、頼っていた自分の心の情景を思い出していたのです。普段は気が付かないだけなのです。