yd908

 家に帰るとほっとする。借家の僕でもそう思うのは家には僕の概念が自然な形で投影されて今日あるからだ。玄関開けてガチャっと鍵をかけて僕は孤独を担保する。ひとりっきりの均衡のとれた唯一無比のパラダイム。この時間がかけがえがない。一人ってここまで最高?って恐らくこれは誰にもある心遊泳の時間だと思う。ゲームをして心解すタイプ、すぐさま自分のドリンクを取り出して飲むタイプ。飲む人間と飲めない人間にまず振り分けられる。やはりビール派は疲れてはいても充実ある放心状態の時にはビールだろう。飲めない人間は替わりになるドリンクを取り出す。毎日がそつなく変哲もなく過ぎていく。ある日突然、砂浜で玉手箱を開けたみたいなショックに見舞われる。竜宮城で貰ったお土産だったが、開けてはいけませんと念を押されていたにも関わらず、開けてしまう。念は年だった・・・・しかし開けたい欲望が勝っていた。これは僕としてはスバ抜けた日本の昔話で時間がいかに大切なものなのか証明出来る物語。全世界にこの物語を広めたい。美しい海の中の竜宮城の女性たち・・・。そこには誰に恋をしようとライバルもなかった。この物語は、ただ単に玉手箱を開けてその煙で毛髪がまっ白になってしまった驚きと憔悴より以前に、始まっている。玉手箱は故意に渡された可能性が濃厚だ。