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 自由と競争、それが元本にあるから快活になる。運と不運、これらも決してないがしろに出来ない。不運に滅入る者もあれば、それをバネとして這い上がる者もある。昨日は松本清張の【顔】という映画にのめり込む。涼子を演じる松雪泰子の演技力に心底参る。彼女の復讐心を描くことで、清張は男達に警鐘を鳴らしたのではないのか。美しくけなげだった彼女を、狂気に駆り立てたのは男の嘘だった。あれほど信じて母親の形見を質に入れてまでお金を作ったのに、監督に紹介する話は作り話だった。松本清張のような小説家に僕は震撼する。女性恐怖性の類いというより、今でも朽ちない彼の小説家としての強固な意図に恐れ入る。男に改心はこの先も必要だろう。何年経過してもその啓発はとても他人事とは思えない。