サファイア・マン《緻密な男編》〔168〕結婚届けを出すけれど、会社には報告しない、まさかそんな裏ワザが世の中で通るなど想像だにしなかった私こそ世間オンチで、しかし三年も待ったからそこでタイムイズオバーではないはず。母親としての良識も同時に問われる場面でした。確かに家に入れずに彼とは別居を通した結婚でも養育費は支払いはあるのです。その道を選んで自分なりの人生を歩んで行けるのでは?と。本物の作家ならやはり苦しい方を選ぶでしょう。苦悩に満ち溢れている方が、読者が見たときにわかり易い。しかし大きな難問もそびえ立っていたのです。私は借財を背負ったゆえに彼を完全に放り出すことが出来ない結果論。宿命的なものでこれには考えさせられるのです。文人にとって、金の存在は何よりも大事な命綱。原稿用紙を購入する、ペンを買う、それすら出来なくなる未来を恐れたのです。時折電話してくる伯母の存在は大きくて、恐れ大きいことを吐いてくるのです。容子ちゃんはいつだったか、私の主人の御見舞いの時に、サイネリアの鉢を抱えて来たけど、あれはご法度。根が付くっていうことで、御見舞いには不適切な花だったって。そういう細やかな教育を受けてない貴女が不憫で仕方ない!!って。