ルビー・ウーマン《ロイヤル・ボックス編》〔219〕弟の心に暗い影が忍び寄っていたにも関わらず、家の中を暗くしてしまう話題をあえて遠ざけて、明るくバイタルに過ごしていたのもわかるでしょう?不調な人に貴男は何かを悩んでいる!?そうなんでしょ?ってぶつける程、ぶしつけではなかった。迂闊だったのはやはり家でじっとしていることが出来ない性癖で、たびたび短大時代の友人のアパートへ出掛けていたのです。彼女の落ち着ける場所を自分の目で見て観察眼をさくさくさせるが、将来の自分に繋がることは自明で、友人がアルバイトを転々としていたことも心を大きく旋回させたのです。彼女はおっとりしていて、いつも他の人のことをいたわる性質で、ようちゃん実家の近い場所に大学生のお兄さんが下宿していた。この奇偶がようちゃんの心をある符合に駆り立てていたのです。矢上神社の横には小さな坂道があって、そこは誰もが通る道ではなく和田家の人間以外には近隣の人々でさえ滅多に通らない。クルマ社会が台頭しこの小道のすぐ下にある下宿にお兄さんがいたことで、ようちゃんの彼女との交流は短大を彼女が出てからも続行になる。同じ外国語短大の親友です。