サファイア・マン《かけがいのない男編》〔150〕彼の全く愛想のない態度にキャロルはぎゃふんとなるも、只では起き上がらない性質だったのです。主婦の仕事への尊厳が全く感じられず、この夫には良薬口に苦しではないけどお灸を据えることがまず肝心とのセオリーに落ち着く。しかしもしも彼が会社に家族届けを出していたならここまで厳しい判定を下してはいないのです。自分のやっていることに気がつかない仕草はある意味、無頓着では済まない様相をかもし出していたのです。独身生活を四十三歳まで謳歌し、そこで培ってしまった世間とは一線を画する行いにこの強豪のキャロルが怖気付く訳はないし、しかしそこは表面に出ないように操作しました。自分の領域を確保することに余念がなかったのです。もしもこういうケチ男ならば、会社に届けてちゃんとしてもボーナスを出すはずはない。きっちりわかったことが動きを鋭敏にさせていたし、ここ大橋で家族だけ残って永遠に棲む!!そういう薔薇色の選択も考えていました。それは主婦に対する過小評価だったし、母業に対する冷酷さでした。もしもこれだけの子沢山でボーナスがないのならキャロルは働きに出ないといけなかったろうし子供も生めなかったでしょう。キャロルが彼を選んだ第二の理由はボーナスがあったから・・・両者に行き違いがあったのです。