ルビー・ウーマン《ロイヤル・ボックス編》〔169〕オーナー夫妻と至福の時を過ごしてクルマで家まで送るわよという言葉に甘え、いざ家の前にさしかかろうとしたときです。四人の直立不動が見えるのです。正しくキャロルのことを今か今かと待っていた家の人々の姿ですがそこにはオーナーに有難う・・・ご馳走してもらってというような気配は見られません。ちゃんとお礼はいいますがもっと早く帰れなかったのか?という内在疑念でしょう。当人のキャロルはそこで温度差というものを初めて経験します。よその子供を一日でも預かる難儀についてです。ちゃんとオーナーと一緒であることはわかっていてもその夜・・・まさお君たちは息咳付かず心配していたことを表わしているだけの万感の思いだったのです。人々は思う描く日常に丸く収まることが先決で違う設定など苦手としていることです。ここでの給料は全部この家に納めているけどそれとはちょっと違うアングルに複雑さに参ってしまうのです。明日からはまた平凡なよろず屋でのレジ嬢。なんだか耐え切れなくなるかと思いきや、まだ、ドキドキして興奮しているのです。仁王立ちでキャロルの来るのを待っていたというあの怒りと緊張漲る立ち姿。せめてプーチンを待つ安倍総理も、そういう威厳に満ちていれば良かったのにな・・・とふと思ったのです。