ルビー・ウーマン《ロイヤル・ボックス編》〔131〕まさお君のお父様は昭和カリスマを持っていて〔昭和一桁生まれ限定〕誰もがその音楽的鋭敏さは認めていました。ちょうどまさお君が住む家の家主になる方がお隣に住んでいてバンドマン。しかもドラム叩き。それもあってかまさお君は音楽的な環境には恵まれていたといえるでしょう。ただし、キャロルの父の訴追さえなければ本当に静かな環境だったといえるのですが・・・。父はなんと籍まで調べ上げて、まさお君のお父さまに談判を申し込む。そして延々と話し合いはもつれ込みそれは深夜まで続くのです。最初はなんとクラブのバンドマン控室に来てその次は日曜日、クラブが休みのときに自宅にやって来たのです。キャバレー以外にもう一軒クラブの仕事を掛け持ちしていたんです。父には猪年生まれ特有のしつこさがありました。バンドマンの権利や人権にも抵触していましたが当時人権問題は今ほど苛烈でなく、それでもまさお君のお父様の憔悴や怒りは相当で、キャロがしばらく口もきけなかった程。父は宇部から住所を変更してないまさお君一家を幽霊人口だとけなし、娘をそういう人たちと一緒に暮らさせるわけにはいかないと息巻きました。キャロルは父の行為を恨みました。しかし心のどこかでわかってはいたのです。勉学にいそしみ自分がなすべくは家から短大に通うこと。道理ではわかっていてもそれに従えない何かがあってそれは得体の知れないものでした。音楽での自信ではありません。むしろ家にはない魅力でしょうか。そういうかつて味わったことのないものや風変わりなことにキャロルはメッポー弱かったのです。問題児というのは一生治らないものですね。