サファイア・マン《面白い男編》〔95〕山の日、キャロル家族が向かったのは弟の家でどうしているかなあ?っていうのもある。近況はわかりません。留守宅の弟の家に上がって仏壇にお参り。父の遺影の横に父と写った次女の成人式のお写真が飾ってあり驚きます。弟はキャロルの次女の成人式振り袖姿がとても嬉しかったのでしょう。ちょうど十年前になりますが彼の気持ち、手に取るようにわかります。次女が彼にとってのステイタスだったということでしょう。弟は美形に拘る性質があったのです。美しいものに弱い。強い者にももちろん憧れる。それで、自分の体も鍛え上げ素晴らしい肉体を保持しています。しかしご仏前に対するお礼の電話もとうとうありません。彼は精神の世界をいかに思っているのでしょう。食うことに一生懸命なのはわかりますが世間的常識からは乖離。玄関には自転車を置いてそのサドルに石を並べ誰も入れないようにしていてそれなのに玄関鍵は開けているのです。キャロルにはその神経がわかりません。立て掛けられた一枚の写真にキャロルの次女が写っていたことで、何だか真心に似たものを感じるに至ったのです。俺はちゃんと生きている!闘っているぞ?と。彼はアルバイトしているのでしょう。しかし電話の一本もよこさない、厭世主義者の典型ですよね。