あなたとの三十周年記念日よ!と言われすっかり記憶にない俺は当惑した。まだ当時日記をつけているわけではないのになぜ四月だと?そこを覚えているかというと俺は思い当たる節がある。彼女には最愛の人が存在したのだ。しかし何か人に話せない事情あったんだろう。俺があいつと知り合った日の二日前に逃亡されている。男としてキャロルから逃げた行為にはなんとなく頷けるものがある。彼女の押し付けがましさ、精神的折檻、そしてお節介、考え方のルーズさ・・・。そういった数々のマイナス要素があって、逃げるという行為を選んだのもわかる気がする。その男は聡明だったのだ。凡そ世界中探してもいない気がする。俺は忍耐力が並外れている。そこは本当なのだ。キャロルが俺の経済対策を参考にしてくれるのが嬉しい。一厘の法則がもしもこの国に適用されるのならこの国に新しい勝算も立つ。九分九厘負けていても最後、一厘のときに勝敗が動く・・・。そういった奇跡を起こさせるのも、確かハリー山科さんの宇宙哲学にあった。一厘の勝ち目しかないのにそこをいかに攻略する?作家の本領の部分だろう。デルスカイしてくれ。勝利目前だ。