サファイア・マン《緻密な男編》〔56〕父と話していると、政治や経済そして世相・・・そういった小難しい背景ばかりで、全然ユメがないって学食カレーをつつきながら思うのです。だいたいなに?数学が出来ないからってそれが結婚に差し支えるの?或いは、子育てで何か問題が?自分は小説家や詩人になりたいのに、音楽も作りたいのに微分積分がなぜ?必修なの?って。こころの中で疑問符は連鎖しますが新しい制服代を親に工面してもらわないと・・こういう切迫した事情にも目を向けないと嘘でした。親孝行の子供の姿ではとてもない。母も悩んでいました。なんと母、転校したことを、卒業するまでタヤには言わないでいる積りだったんですから女性のプライドの高さ見事さに息を止めます。タヤは近所のおばあちゃんに言われて初めて気がつくんです。制服違ってる、転校したとじゃなかと?って。タヤも名門の女性。それ相応に悩んだのでしょう。それからキャロルを見る目が憐憫に変わりました。キャロルは日大高校に転校してすぐ同じ中学だった男子女子に質問攻めに遭います。なんで転校したと?なんかあったと?中学のときそれなりの優等生だったキャロルは回答に苦慮します。アタマが悪いけん、転校したとさ・・・と自分で言い掛けてそれが誹謗中傷にあたることにハッとさせられます。