サファイア・マン《面白い男編》〔38〕キャロルにはおおまかには四つの道が目の前に開けていました。ひとつはエイミーが危惧したように、今すぐこの店を退職して昼間の仕事で頑張る。次がフルカブホステスのヘルプとして、店は辞めないまでも、そこそこの給料を得て、パーティ収入重視で貯蓄の為にそつなく、つつがなくを念頭に頑張る。第三が破格でした。この店の誰にも頼らずに自分の顧客のみで勝負する。ヘルプで呼んでもらえなくてもいい一匹狼の地位確立。四番目は速いトコ、自分の店を出すためのパトロンかスポンサーを見つける。意外や意外、キャロルが獲ったのが獲らざるをえなかったのが三番目でした。毛頭意地があるキャロルのこと一番目は頭にない、考えません。すると二番目あたりが、売れないホステス、そして売れっ子ホステスがやることでした。ペアで組んで、そのふたりがもうふたりと組めば四人でしょ?その四人がどこぞの四人と組む、その派閥力のテーブル戦争でした。どこの馬の骨かも判らないキャロルはその派閥勢からめった打ち。テーブルに行くたびにカマトトと呼ばれ、ぶりっ子とはやされ傷付きます。しかしキャロルは本当に傷付いていたわけではなく女性の本能を研究していたのです。彼女達ほとんど、この道何年も来たベテランですよ・・・。場数を踏んできただけのランがあるはず。自分は何を彼女達から吸収出来るか?その吟味に入っていました。恵理にはない気位、しぶとさ、集団的攻防力、そして気配りの極意、ペーソス。こういった長年培われたものの正体をキャロ万華鏡を駆使して見る、見える?とても味わい深かったのです。