ルビー・ウーマン《ジーニアース編》〔61〕芳樹ちゃんはヨッキちゃんと呼ばれ、小さいときに一階のお縁から落ちて負傷した少年で、この少年のつぶらな瞳に秘密があるとキャロルは思います。後年になって知ることになるのですが、最初父と結婚した女性が美しくてそれは神々しかった・・・と。そういった噂話をキャロルは聴いて、とたんにこころが騒々しくなったのです。どんな気持ちでキャロル母と子の到来をこの時、子供の目線で捉えたのか?そしてその乱暴な立ち振る舞いに、どれだけこころが傷付いたのか。この時翌日すぐに母はキャロルを迎えに来るのですが、正しく、強引手法でしてその速さや突発性に戦いたくらいのキャロルだった。正しく行水中だったので、その突然は赤ちゃんとしての胆を冷やしたのです。さっさと私の娘を返してちょうだい!こんな、人の一杯通るしかも玄関先で行水させていいですよとは、ヒトコトも言ってない!早くタオルにくるんで返して頂戴!私の赤ちゃんよ!前日、キャロルは母を哀れんで、母に愛着が沸いていたというのに、一気に寒くなります。裸で出され、すぐ又バスタオルにくるまれてしまったからです。行水が気に入ってその中で手足を随分と伸ばしましたものを・・・。前日で、キャロルは突拍子もない国に生まれてしまったことに気が付きます。確たる思想もなく、すべて無茶苦茶。言葉を吐く者は全員違うことを口走る・・・。艱難の極みはこの国にあるし、人々の頭の中でそれらを共有している。そこで最も恐るべき人生の先輩、母について悟るのです。みんなから陰で悪口を言われている恩讐の母親と、これからこの国の蒙昧の嵐の中を、手を携えて生きていかなければならないという自分ではどうしようもない宿命だったのです。