父は日本一の恐妻家だった

 

鬼の居ぬ間の洗濯と聞き、私が真っ先に思い浮かべるのは父の深層心理です。ざっくばらんに母と対峙すれば良いのに、父は母に対するとき、かしこまってしまう傾向があり、それと言うのも、母がズバリ父の心を読む素早さにあったようです。父は蛇に睨まれたカエルのように、常にびくびくしていたことを、今、思い出しながら、執筆しています。母が父をびびり上がらせていたのには、訳があった。敗戦後、男の中の男の姿は日本から消えてしまい、父を怯えさすことで母が溜飲をおろしていた事実。私は幼いながら、この国には秘密の小部屋があることを、直感して、それを父に尋ねるまでもなく、解明していた可能性が高い。生誕100年を、父は今年迎え、あたしに、果たし状を送って来ました。それを、明日は狂歌で皆に伝えるかと思うと、ぞくぞくしてきます。