アクアマリン・マン33

 僕等の時代は親父の言うことが最優先で週に一回、襖の間から覗いたものだった。6人の子供を残して妻は他界。親父はどうすれば自分は長生きして、子ども等全員を1人前に出来るか?を考え抜いた挙げ句に出て来たのがしゃぶしゃぶ案だった。お前たちには申し訳ないが、俺は週に一回、牛肉を頂く。それもこれも、自分に精を付けて、英気を養わなければならない、わかるな?僕らは全員頷くけれど、心穏やかではない。襖の間から湯気が立ち昇り親父は箸を取る。美味い!!というのけぞるようなうめき。僕は大人の罪を思う。確かに、僕らを育成する為には精力は必要だろう。だからって、僕らが覗きをしないといけない興奮は許されるのだろうか?兄貴も黙って見ていた。f:id:hn0709:20220122131700j:plain