サファイア・マン《面白い男編》〔189〕私は自分の固定観念や既成概念をこの店に入店したことでざっくり剥がされて他のみんなのダイナミックさに正直打ちのめされていたといっても過言ではなく、特に熾烈な顧客争奪戦を繰り広げる先輩たちに嫌気がさしていたことも的を獲ていていて、どのテーブルに行っても実は落ち付かなかったのです。テーブルマスターがすべての売り上げを持って行くこともあって、その女性に皆がぺこぺこしていたのです。その女性に呼んでもらえれば指名料は付く。そういった緻密な計算で動く従業員全員にようちゃんはのろしを挙げていたのかもしれません。自分の将来に有益な人物か?それともそうではないなど、二十六歳のようちゃんにわかるはずのないのですが、彼女たちが若干年上であったことで、その見方にも段々慣れて来ていたと言えます。若い時に馬車馬のように働いてこの世界に来た人間は皆無でむしろこのクラブはお嬢様が多かったのです。そんなこと、迂闊に信じられないと思うかもしれません。ようちゃんだって、たじろいだのです。自分の作法にごちゃごちゃ文句付けて来た人間は身内にだってそうはいないのに、全員が全員、ようちゃんのマナーに関して煩い注文を付けて来たのです。