サファイア・マン《面白い男編》〔187〕情報はどこからも入ってこないのに、夫が次は必ず支店長になれる!!とそう確信している点がようちゃんにとっては複雑怪奇で、私の中でそれは、叶えられることがないかもしれない願いであり、範疇にあったと言えます。しかし三年サイクルの転勤で普通は決まるはずが、夫への転勤辞令が一年も延びていることで、彼が確信に似たものを掴んでいるのかも?と推察はしていたのです。彼を支店長にすることで何が銀行にとって利益なのか?進歩なのか?私もない頭でスクロールを開始していたのです。彼の成績が上がっていくことは、すかさず、他の行員たちを奮い立たせ、銀行幹部の人々の心を揺り動かすものになる?って。しかしようちゃんは全く別のことも視野内に置いていたのです。その頃、銀行を取り巻く事情は日に日に悪化していることが観て取れて、バブルの飽和状態から遠く離れて、その遠心力に今度は深い傷を負ってしまいそうな事態にあることが判明して来たのです。運のある銀行は残る、そして政府と関係ある人物が天下りで来れば安泰、というようなお決まりの考え方に行く前に、もっと律儀な正論がしっかり腰を据えてそこに留まっていたことが幸いだったのです。彼らはどこまで生き延びるかを、容赦もなく競い始めていたのです。このことは女子行員や妻の座にあってもよく見えました。理屈を捏ねている場合ではなかったのです。