アクアマリン・マン《真春と真夏の間編》〔3〕男手ひとつで育てられた俺は結婚の意味も学習しておらず、結婚が何の為にするかを全く知らず、それゆえ、嫁に任せていればいいと、ずっと船頭の役目を嫁がしてくれた。その時点では助かった俺だが、俺はあいつの日常を全く知らない。進学の為といって市街に引っ越して行ったのだ。俺は最初こそしゃかりきになって探すも一旦は冷静になる。あいつを呼び戻そうとすることに自分で待ったを掛けたのだ。俺にちゃんと報告し住所も伝えて来ていた。信じられない強固さで君臨するのは、母が男の子を思う気持ちで、一粒種だったことも起因する。県職員の仕事を持っている嫁にアレコレ言う資格など俺にはなく、住まいを見つけたものの、その足で帰って来たのだ。怖かったというのもあって、家に帰ると仏間にへたり込んだ。女性が一生を賭けて動かないといけない時があってそれが御受験!!と嫁は言い切った。その中高一貫の公立中学校に入学を決めた時点で、嫁の奔走にはさらなる拍車が掛かった。俺のことなど一ミリも見ていないその態度に俺も覚悟を決めたのだった。