サファイア・マン《緻密な男編》〔142〕彼に対して謝らなければならないことが一杯で、いつも構ってやれなかった。それなのに長男は今最も優しくて、お母さんの誕生日だからと今週の初めには二万円を送金してきたのです。キャロルも今がもっとも苦しいときで、毎日の生活費にもこと欠いている段階で、久し振りにラテン音楽を聴きたくなって彼にせがんだのです。音楽CD用のカセットデッキがまだ、見つけられずこれだけ掃除をして見つからなかったということは誰かに進呈した可能性も否めず、小型の手の平サイズのCDプレイヤーが運よくみつかったので、ラテン音楽CDを注文して聴いてみようと張り切っているのです。もっとも可愛がってない子供の方が母の苦労を読み取り善処する・・・このことはとても貴重です。長女などこの前会ったときに大橋時代のことをこう振り返るのです。お母さんに百円ずつ渡されてどっか遊びにいってきな!って毎回言われて辛かった・・・と零すのです。ま、まさかの言動で胆に銘じます。キャロルはいい妻になりたくて毎日努力しすぎて、すっかり子供達をないがしろにしていた口・・・。今はっきり言えるのは子供はすべてのことをよく覚えているということで、背筋がガチョーンと鳴る瞬間でもあるのです。