還暦になるキャロルに何かお祝いをとも思うが俺はなにも祝われていない。容子の父親と伯母が俺に赤いチャンチャンコを着せて矢上神社でお参りして神主に祝詞をあげてもらった。そこで俺は還暦にいよいよなったんだな・・・という実感が湧いてくるんだ。人間が本来持っていた闘争心や競争心を鑑みるいい機会ではあった。俺は十九歳から五十九歳までとちょうど四十年銀行に勤め、この還暦のときにはぱち屋へ出向でそれから五年働くのだ。堅い職場へ出向した同僚たちがうらやましかった。俺は最初から自分をはかなみ、萎縮していたが、その姿、キャロルにはどう映ったのだろう。だいたい銀行が行ける出向先は融資先が大半だ。俺はそういう銀行絵巻の時代がすでに終わったことを知っているし、キャロもそうだが各人も思うところだろう。銀行はたとえ、融資先ではなくとも繋がりを求めて勢い付いていいのだ。ボックスは急転開するだろう。デルスカイしておこう。ブラックバッカスだ。黒いっていうことは美味に値する。なぜならグレーでは談じてない。