サファイア・マン《緻密な男編》〔59〕キャロルが困難のルツボに沈んだのにも訳がありました。数学だけではなく化学も生物も引っ掛かっていたのです。親友は難を逃れます。家庭教師を頼っていたのです。キャロルはこの東高に入学したときに実は合格前に合格を知ってたという可不思議な境遇にあり、誰よりも恵まれていた・・・。実は父の恩顧知新たる人物がいて、合格の報が一晩速かった。そういうのあり?これは四十四年前の話ですからね、父がどんなにキャロルの入学に熱が入っていたかを物語る内容になっていますし、この窮地も父は土壇場まで、東高に通い詰めます。一学期の最後、秋・・・そしてこの二学期の最後、三学期はほぼ毎週です。転校させるにしても学校を追われるにしても、私立ではなく、公立を受けさせてくれ?この娘の体面にも関わる重大問題だ!!と若き日の父は譲らなかったのです。恐らくオチコボレ生徒多きといえどキャロルへの処遇は殊遇で、当時こういうご加護は見たことがありません。父というものの偉大さをキャロルは今更ながら思うのです。こういう父なら、転校であっても元が取れる!!と。キャロルは塾にも行かずそして家庭教師も頼みません。父の攻防を見たかったという一念でいたのです。