せっかくお父さんに親孝行出来たと喜んでいたのに、この株の下落、あのときにやっぱり売れば良かったわね?と長女が申し訳なさそうに言ってきる。俺はこの娘のこういう率直な素直さが好きだ。俺は損なんかはまだ、していないぞ?じゃあ、このまま売らずに持っておくのね?ああ、株式なんてのは俺にとって投資ではない、あくまでも最後の虎の子なんだ。びっくりするくらいに腰が据わっているし、胆も同時に据わっている。俺は二束三文の扱いを受けて久しいキャロルの才能を唯一、知る人間。こういう人物が身近にいるのに株を売るわけがないし、売る理由すらないのだ。