サファイア・マン《面白い男編》〔48〕今総合すると、父の快挙はあの図書館司書の免許を取ろうとそう決心したことだし、母の明晰は脇田大佐を封印したことだとそう思う。二人ともすこぶる聡明だったということです。キャロルは改めて、ニッポンの文学がお肌の曲がり角に来ているなとそういった感慨を持っています。真摯な気持ちで遠藤先生と向き合い、結婚に至る三つの動機、これが結婚論にしたためてあって、上梓とはこういうことを指すのか?と洗礼を受けたような感動があったのです。結婚に至るにはひとつ・・・両親を喜ばせたい。そして兄弟を安心させたい、そして・・・・次を読んでキャロルは現在の結婚の自分の真相を知ったのです。経済的安定です。そうすると結婚は女性側からのモクロミなのか?と男性は愕然となるかもしれませんが、やぶしの場合最も欲しいものが家事の手ではなく夫婦の愛情ではなく自分の後継者、子供だった・・・という驚愕部位です。だからふたりは丸く収まったし二十九年も寄り添えたと。父は一度も母の暴言や暴力に対して自分の力を駆使したことはなく、いつも言葉での攻防でして、もしかしたらそれが赤ちゃんキャロルの脳を行くところまで行かせたというのはあるでしょう。女に暴力を加えることの不当性を知っていたし、それ以前に言葉があるじゃないか?と。