サファイア・マン《かけがえのない男編》〔10〕指をくわえて何もせずに留年か、転校の二者択一を三学期に迎えたわけではなく、キャロルは恋に目覚めていたとも言えるでしょう。そのK君ともヒトコトも言葉を交わさず別れますが、二期二会がありそこでも固唾を飲みました。あとから出てきますが、まずそのクラスに決まったときに、不思議な二期二会を果たしていたのです。キャロルは弟も同じ目に遭っているのですが、浜の町のアーケードを母とふたりで歩いていると、突然手が離れ迷子になるんです。弟にも同じような経験があると知って驚きます。五歳くらいですね。長崎のアーケード入って暫く歩いた右には母がよく連れていってくれたお風呂やさんがありました。そこまで行く前に母は突然いなくなる。キャロルには、わざとしたとしか映りません。不安に駆られワンワン泣いて連れていかれたのが最初は派出所。でもきっとその商店がわかり易いと思ったのでしょう。ある家具店の店のフロアで待つようにと言われます。キャロルが泣きながら今か今かと待っていると母がやって来ます。こころを疑う場面と母が来たという歓喜。交錯する思いをなだめたのが家具店の従業員でした。本当に良かったね、もうお母さんの手を離したらダメけんね?母に抱きしめられて、わざと迷子にしたのではないという実感に熱くなりました。その家具やの息子さんが同クラス。そして和泉くんと同じラグビー部。弟も実際こう言っていました。お母さんに迷子にされたんだよ!!と。弟やキャロルを将来イッチョ前にするために、聡明な母が軍人教育の一環として仕組んだのでしょうか。