パラノーマシゲコは当然、妻の仕事を理解した。自分には出来ないことだったからだ。書くことはそれこそ、山程、こなしたが、自分が書いたのは、企業に融資するときの案件、そして管理部にいるときには不良債権の処理。もう一度、再生可能かどうか?そういった様々な業務で書くことはあったが、妻キャロルは家庭を書く、そして家庭と世の中との接点を書く、家庭からしか見えない世の中ももちろんあるだろう・・・。それを書くことに、有意義さを俺は感じる。朝、五時ごろ、必ず妻は一戸建ての書斎の鍵を開ける。そのカチャという音が俺をラビリンスに誘うのだ。男だけが意見を言う世の中なら、いつかは疲弊し、めちゃくちゃな論理もまかり通る世の中になってしまうに違いない。その様子を嫌と言うほど見てきた。女性が輝くためには、一個人がみんな物を言えなくてはならない、そして生きる素地がなければ・・・。もちろん男性もしかり!!世の中にまだ出てもいない妻キャロルを尋ねて来る人々が正統な用件で来た場合にのみ、俺は妻キャロルを呼ぶし、仲介をしてもいいと思うのだ。