パラノーマシゲコはこうして、自分がキャロルによって全世界にその名前を広められるなど、露ほどにも思わなかったが、キャロルの語彙力には、事実舌を巻いてしまって戻らないということには人生で何回も遭遇。とても口では勝てない。なぜなんだろう、次から次へと言葉のビンタ。実際応酬しようとしても自分には予備軍の言葉しかないことがわかる。手勢のみ。なぜ?妻には語彙が100万の軍隊のように控えるのだろうか?しかも胎児の時代を覚えているというのだ。最初は言葉の飛躍だと思っていた。しかし、ここにきて、その時代を確かに記憶しているという人々が、世界中にわずかながらいることがわかる。バイオリンの練習を母がしていて、そのなんともいえない複雑な耳障りな音、こすれる音に胎児であったキャロルは耳を覆いたくなる。恐らく母は間違って女に生まれたし、軍人になっていれば毎年昇格だったろう・・・と。時代が横転したのだ。その歯車の中でどうにか、かすかに息をしていて助かったのが妻キャロル。恐らく、シゲコは銀行員だった自分がいずれは世界からこう呼ばれるのでは?と。キャロルが成功を収めたとき。バンカーが銀行家になると英語はどう豹変するのか?俺は調べない。なんでかって71歳の老人だからだ。