サファイア・マン《緻密な男編》〔173〕ようちゃんはシゲルちゃんの家の冷蔵庫を初めて開けて見た時に、四分の一カットの白菜が入っていて驚くのです。トマト、レモン、キューリ、色んなものが備えてあって、卵、牛乳もある、この人は確実に自炊をしている人だあって。下手な主婦の冷蔵庫よりも奇麗に整頓してあって、冷蔵庫の中を点検し覗いたことで、大凡の見当が付いた。これを冷蔵庫占いとしましょう。お金があるとか、ないとかの分類ではなく、確実に、レタスよりも白菜を好む人はいて、サラダが好きなのか?それとも味噌汁派なのか?野菜の集め方で解るのです。ようちゃんは彼の冷蔵庫を見たあと、鍋にも注目します。独身貴族の台所用品には、全く派手な部分は見当たらず、逆にさもしいのです。確かに安物買いの銭失いを最も嫌気する彼独特の堅調な選び方は納得出来ます。鍋だって、それ相応にお高い立派なものを置いてある。しかしようちゃんは独身貴族の限界のようなものを台所の情景に見てしまう。何かがこの人物の人生には欠損している、それが何か?っていうことよりも目を付けたのは、破れ鍋に綴蓋の本当の意味についてなんです。ようちゃんはなぜ、こんなに激しい倹約家のもとに嫁ぎながら、大胆不敵な行動や挑戦が出来たのでしょう?普通なら出来る訳ありません。