ルビー・ウーマン《ジーニアース編》〔94〕新しい幼稚園に転園して、キャロルはそこに一週間に一度教えに来るピアノの先生に替わります。意地でも母は小山先生にと最初の何ヶ月かは試行錯誤しますが、キャロル電車やバスに酔い易い、すぐに吐き気を催すという一点でとうとう諦めざるを得なかったのです。キャロルはこうして新しい先生のもと、小学四年生までピアノを習いますが、四年生の夏、チカちゃんとの出会いでこのピアノを辞め、中学三年生の中総体まで中断します。チカちゃんの魔力でした。彼女はいわゆる大富豪でそのチカちゃんの家がある上田ノ浦〔カミタノウラ〕までいって遊ぶことに夢中になってしまいキャロルはピアノを辞めたのです。そこにはレコードが渦高くあって様々な音楽を聴ける。特大応接セットもあって、キャロルはチカちゃんとチークダンスを踊るんです。一番幸せな時代は小学校入学前の一年から小学校五年くらいまで・・・。このあとに、キャロルは困った病気に悩むんです。対人で教師の前で喋れなくなる。この病は恐らく小学校高学年、六年生頃からすでに発症していますが自分で治すつもりでいたのに、中一で、ある教師のテコ入れが掛かる。それで頑固になりとうとう中2の終わりまで話さずじまい。中3からは元に戻っています。キャロルはこの黄金期を、東望〔とうぼう〕の浜海水浴場をこのジーニアース編で描こうと思っているんです。正しく準プライベートビーチに当たるわけですが、海水浴場は消えたけれどこころのアルバムにしっかり残っていて本当に嬉しいし懐かしいです。