サファイア・マン《かけがいのない男編》〔112〕まず指輪くらい夫と揃えたいとそう思います。ペアリングを欲しがるキャロルに彼は素っ気無い返事で攻防します。指輪は絶対に嫌だ、会社に届けてないのにどのツラ下げてそんなもん付けるんだ?キャロルはこういう言い回しでもすぐに近未来が予知出来ました。もしも近い将来においてちゃんと入籍報告を会社にする予定でいるなら指輪をせがまれたときに違うニッポン語が出て来るはずです。キャロルはこういう事態、指輪を懇願しても断られることが癪に障りましたし、打開案が要るとそう思ったのです。相手の為に死ぬことも女性はあり!で出産がある。それなのに男のていたらくは帆のないまま漂流する朽ちたボートのようで切なく心もとなかった・・・。しかしいいこともありました。銭ハゲと診断された長女のことをほっとけず、とうとう長崎から五歳と七歳の二人を福岡に連れてくるのです。今思えばあのときの即時決行は良かったと思う。母は子供達の相手は苦手だったのです。どんなに親子でもこれ以上甘えることは出来なかった。せっかくバンカーを射止めても、まるでいいことなんか、ひとつもないじゃないの?自分は何を求めていたんだろう?マジでそう問い掛けていたのです。