イエローダイヤ・マン《標榜編》〔8〕俺たちの仕事にもときどき大穴があって、顧客の疑問にまともに答えられる時とそうでないときがあって、その辺の美味をいかに把握するか、把握マジックがそもそも面白みがあって、知恵袋のようなコーナーも俺は受け持っていた。しかし疑問を持った人が最初から間違っているとこれは難儀を呈してくるし、その経緯も忽せに出来ない。一回こういうことがあった。UBSって何の略ですか?っ来て俺は半日を掛けて探す。仲間に訊けなかったし、それこそ恥も外聞も俺にはあって、それもこれも形を重んじる両親の影響。悪い方の影響だ。こんなことも知らないのか?そしてその先にあるのは語彙外しだ。この語彙コーナーから外されれば出世コースからは永遠に遠ざかる。俺にはひとつだけこっちから質問出来るという助けもあり、その顧客に尋ねる。どの分野の言葉ですか?俺は自分が情けなかったが職場のメンメンに訊くよりははるかに増しだったのだ。アメリカ大リーグのチームにあるんです!俺はカタッパシに検索するがない、試合を観る事にする、そこで判明したのだった。この女老齢顧客はカブスのCを見ていなかったのだ。あのロゴは周囲がCでその中にUBSの文字が来る。俺は目の検査に合格した、本当は目の悪い自動車免許更新のようにおどろおどろしかった。しかし恐怖の代償は美味で、しばらく箸がちゃんと握れなかったのだ。