サファイア・マン《緻密な男編》〔98〕バンカーと結婚してお金で苦労するなんて・・・との味気ない憔悴。しかし自分には覇気があったのです。小さな拘りといってもいいでしょう。男に三つ指ついて何かをお願いする・・・などという大人手腕を持ち合わせてはいなかった。親戚の誰もが、キャロルの結婚を拾われ婚だと揶揄したり半ば馬鹿にしたような言い方をしましたがじっと耐えていたのです。彼女達はそれこそこう言いました。三つ指ついて、毎日帰って来られたら、玄関で待ってなきゃあね?容子ちゃんって。捨て猫が拾われたような表現でしたからキャロルに予め決意のような思いが強固だったのかもしれません。シゲルちゃんはキャロルに持参金があると踏んだのでしょう。最低限のお金しか渡さない。そしてキャロル側にも見栄があって三十歳になるまで貯金が零などと口が裂けても言えないメンツがあった。彼は一日二千円食費があれば大丈夫だろう・・・との算段でそれくらいを渡してくれたのですが、光熱費は全部銀行引き去りにしてくれて、もちろん家賃も会社がほぼ負担だったんですが、マンション共益費なるものがあって、それ支払ってくれる?って言われて快諾したのが発端でした。無理だよ!!と答えれば何も生じなかったんですがキャロルが拘ったのは、自分がバツイチで彼が初婚だというレベルの違いだったのです。レベル婚とケサボイしときましょう。