脇田大佐は薄暮ゲームという耳慣れない言葉にはっとする。一体何を意味するのか?容子が即座に尋ねている。ハクボってなんやねん?わからないことや疑問に思ったことはすぐさま尋ねるのが容子で有り難い。脇田大佐はそういう容子が好きだったし、自分の中だけで苦悶しない姿がわかり易かった。薄暮っていうのは夕方の試合を指すんだよ・・・。伴侶もやけに分かり易い。この野球通の伴侶なしでは容子の前進もおぼつかなかっただけに大佐も思いを馳せる。最初はこの伴侶が気に食わなかった。佐世保に本拠地のある銀行なのに帝国海軍のことも全く知らない。本当に歴史を勉強したのか?大佐がこの結婚に一抹の不安を覚えたのは軽率だった・・・そのことにやっと気が付く。薄暮の試合でとんでもないことが起こるからだ。三十試合を経過しようかというそのヤンキースのヘッドリーになんとホームラン第一号は生まれる。しかもツーランだ。誰もが諦めていたその頃、正しく薄暮のゲームも夜へ移行してしまった頃流星のようなアーチは生まれる・・・。人生の汲めども尽きぬ喜びとは正にこのような快挙を言うのではないのか?ほなあ大佐、喜一郎定食お願いします。ヘッドリー 薄暮が生みし 奇跡かな〔頭を使えば奇跡は生まれる、薄暮に薄母が掛かる、才能とは努力という思いの賜物だ〕