ルビー・ウーマン《ジーニアース編》〔106〕亡くなってから輝くなんてそんなの嫌だ?って父の人生をみんなが敬遠するとしたらそれはマチガイです。キャロルは父の人生が決して華やかではなかったからこそ光る・・・とそう観ています。在野で己の主観性をまっとうすることは並大抵のことではないのです。どこかに妥協はあるし、あのときが父にとっての最後の反発だったかも?と振り返るのは九十一歳のお誕生日を長女であるキャロルの家で迎えたときです。何でもないいさかいでやぶしと揉めて、父は家に戻る決心をしました。やぶしはきっちりしていないと嫌だったのです。例えばアンパンを食べるおやつの時間。我が家では二時半で、それもひとり一個か二個まで。父は二個以上欲しがってやぶしを怒らせる。我が家の決まりですからキャロルも黙っていました。すると父は翌日のデイケアから帰宅と同時にやぶしに迫られます。約束事を守れないならここにはおれないからね?父は自分に正直でした。家に帰る方を選ぶんですね・・・。今思えばあれで良かったかなあってそう思うのです。父は束縛を毛嫌いしました。あの第二次世界大戦で負けて復員したというのに自由を大層、慮ったのです。ところで、エッセイとエッセー、果たしてどちらが正しいのでしょうか。