ルビー・ウーマン《ジーニアース編》〔93〕もしもこの叔母が自分の短歌を見せてくれなかったなら、詩歌自体に興味を持つこともなかったでしょうし、叔母は自分の体がいつどうなるのか?それをいつもこころの中で数え葛藤している緊迫面を持っていた。母より二歳下ですが、一般の主婦になって家庭に入るというような希望を感じなかったのは事実です。母の変貌が彼女を落胆させたし、いい嫁どころかバリアを張って攻防したわけでしょ?どうしても不信感が先に走ってしまいますよね。原爆投下の現地でなぜ無傷で生き残ったかを弟が以前話してくれたので書き直しますね。防空壕に入っていて難を逃れたという説なんです。ちょうどお昼前で缶詰を取りにいってたって。詳しいことはわかりません。叔母にそういうことを訊けなかった。その替わり自由の息吹を短歌に与えてあげて!っていう叔母の言葉が響くのです。時代は刻々と推移していくけれど、そこで感じたものや、見たものは必ず遺してあげないと。そういう言葉がキャロルの頭に刻まれていくのです。遺言をこうしてキャロルも残していますが、したためたものがすべて遺言のようにとられて構わないと思います。子供を欲しくてもきっと結婚そのものがダメなんだと叔母は思っていた。その慟哭を詩人としてどう表現するのか?彼女は奮闘していたに違いないのですが、同じ女性である母は断絶という形でしか向き合わなかった、しかしキャロルは吸収しようと、しないといけないとそう思ったのです。シカトや完全無視には何も未来へ繋がる進展がないことを既に知っていたのです。