ルビー・ウーマン《ロイヤル・ボックス編》〔73〕伯母の眠る光源寺に行くときには、嬉しい報告を伝えられたらどんなにシゲコも甲斐があったというものでしょう。芸術家を支える、或いは、輩出するといった家族のこころの苦しみ、葛藤は相当なものです。誰もが、才能ないから諦めるのよ、諦めることも人生の選択なのよ?と言うかと・・・。伯母の場合、そして父の場合、全く違っていました。書き続けることに意義があるのよ、家庭生活を持たなかった、或いは子供を授からなかった人々の為にも書くことが重要なのよと。嬉しいなあとそう思うし、シゲコもまるっきり変りました。去年の終わりの大喧嘩で異様なほどの妻の発言力で、未曾有の努力を積んできたことがわかったのです。キャロルが大音響で何かを訴えるときには、耳栓をしながらでも逐一聴くようにしている、銀行時代、ある事件に遭遇、後に、この事件は監囚ということで解決を見るのだが、そういう相手は電話しても中々出ない、出ることがあっても非常に遅い・・・。彼の勘はそこで磨かれた。十分な速さ、そして回答が得られないときには、みずから迷宮に入ろうとしている可能性が高いのだ。まず認識をシャープにしないといけないのは、それぞれ個が持っているところの平常心と即感力だろう。図らずも行員時代にそれを学び、幾多の難事件も解決してきた。法廷にも立った。回答が得られない、そして連絡がとれないというのは相当に難事件と見るべき。幸いにもキャロルは家族の認識上にあり日々暮らしている。果報を寝て待てる側に居られるのも神のご加護でしょう。