サファイア・マン《緻密な男編》〔16〕子供を育てるということに弟が参加するという機会に一度だけ遭遇したことがあったのです。キャロルが今の夫と新天地を福岡として住み始めたとき。前夫とのふたりの子供を長崎の父と母に預けて三ヶ月間、福岡に現夫との間に出来た赤ちゃんを連れて行っていた時期。この三ヶ月もの間、キャロルはいても立ってもいられない自分と未知との遭遇を果たしていたのです。弟はよく面倒を看てくれていましたが、母親が結婚で児童手当は切られますから、当然父たちも苦しくなってきます。そこで、もしも今なら?キャロルは図太いようですが、あのまま、預けることもひとつの有効性があったかな?って思うのです。もちろんタラレバ現象ではありますが、弟があんなに生き生きとキャロルの子供達と会話する姿を観ていただけに自分は欲張りであったと猛省するのです。前夫との子供も引き取り、銀行員の妻としても会社に申告をしてもらいたい!!と。よくよく考えると、現夫の苦悩はあらたかです。ひとり娘でさえ届けることに難儀をかもし出すのに、三人の子供の父になりました~では支店長の椅子は遠ざかるばかり・・・。イケイケドンドンの豪放ライラックのキャロルは意外にも狡猾でした。夫が銀行に申告を渋る間を逃さずに、それを理由に前夫とのふたりの子供達を福岡に連れて来たのです。両親にこれ以上苦労を掛けられないというよりも自分の為に、いても立ってもいられない自分の慟哭を治めるために子供達を引き取ったのです。こうやって見ていくと自分がどんなにあざとい人間かが観覧できますね。