サファイア・マン《かけがえのない男編》〔15〕弟の小さいときを思い出すと、ふと懐かしい思いに駆られる。キャロルはあんなに弟の誕生を待ちに待って、確かに学校から帰ると、オモりにいそしんではいたが、毎回のお留守番やオムツ替え、そしてやがて自分が遊びたいときにこの弟がお荷物になるという厄介な憂鬱をきたしてきた頃、ちょうど、両方の足が思うように動き、キャロルが遊びにいくときには、必ずあとを、彼がつけて来るときですよね、時によろよろするし怪我させるようで怖い感じがします。ついて来させないことが最も安全ですが、キャロルはやがて彼をまくようになります。迷子にしてしまい、そして諦めて家に帰るように仕向ける。もちろん彼が泣いて、最初は忍耐が要る場面ですが物陰で隠れて見ています。諦めて家に入ってくれ!と心底願いますが無鉄砲なんですよ、いきなりどこかに走り出したりする。この間、行って遊んだあの家の前の路地ではないか?と彼なりに目星をつけてるんです。参りますよ。3歳くらいとはいえ、彼はキャロルと同遺伝子すこぶる特異。誰でもが欲しがる遺伝子ですよね♪今、社会からは干されてはいますが、彼が諦めず、姉の居所を強く思って、一直線に走り出したときに、キャロルは後ろから追い駆けて優しい言葉を掛けました。一緒に連れていくから、頼むからさ~怪我するようなことにはならないでよね?弟はニコっと笑うんです。ウィーン少年合唱団のように微笑む弟。若き日のマーク・レスターさんににそっくりな風貌でしたね。近所で遊ぶときはそれで良かったものの、バスに乗って遊びにいくときには事前に母に頼みました。