月俣氏はすぐに日時と場所を決めて下さって、電話して、二、三日後には、お会いすることがかなうんだ。イワタヤの横のカフェテラス。お会いするなり、そのダンディさに圧倒されるんだ。西南大学出のエリート。大きな上背、佐田啓二さんの目をもっと大きくしたような瞳。こういう時に、いつもは、びびり屋のキャロが流暢に話出来るってとこが、今でも分からない。謎だよ。それに言っとくけどね、温情の転勤なんて、何も知らないこの時のキャロだからねえ、それを、知ってたら、宿矢教授がどうなってたか、わからんね~大学のビーカーに腸まで!!じゃなくって、腸だけ残ったかもね。キャロには、桜島の噴火口と共に、暮らした先人達の、エネルギーがどこかにあるんだ。そして、山下清のように優しい所がある反面、人のこころの裏にあるものが、見えちゃう瞬間・・・。人のこころが、見えるって、いいことばっかじゃないんだ。自分が損までして、キャロを銀行に届けないっていう、彼の生き様・・・。許せないんだ!って、直訴したんだ。旦那は、嘘をついて、銀行で、独身を通しているけど、それは、妻として、どうしても、このままにしておけないし、耐えられないってね。月俣さんは、とても優しいんだ。暫く、黙っておられた・・・。隣の椅子に寝ている赤ちゃんを見て、それでも赤ちゃんの話には行かない。そして、今、26才になる娘なんだけど、喫茶店の硬い椅子にすやすや・・・。本人が、届けない限り、我々には、どうしようも無いんですよ。キャロは、そこを、なんとか!とはもう言わなかった。沈黙の中にある、月俣氏の思い・・・。ここまで、歩いて出向いてきたこころが、有難くて、もうこらえられなくて、ワンワン泣き出してしまったんだ。ハンカチをもらうと、更に激しく。お願いです!お願いです!え?月俣さんが、制止するまで、泣きじゃくっていたんですね。僕があなたを泣かせているって、見られませんか?だから泣くのはやめてくださいね。