ルビー・ウーマン《ロイヤル・ボックス編》〔204〕父は今頃になって私を見つけたようです。黄泉の国に行ってようやく自分の子孫達が見える位置を獲得するまでには相当に年月が掛かるのでしょう。亡くなって私たちが今も元気にしていることを喜んでいます。そして西暦1923年生まれの父が八十歳で出版した本を読んで、ようやく理解出来る歳に達したのが今のキャロルです。これまでは無責任極まる教えのように思っていたのです。しかし翻ります。世の中には自分の力ではどうにもならないことが存在することを知ったからです。もはや、より頼む手段など存在はしない・・・とそう観念したときが他力本願の出番だということに気が付かされたし、この西暦2003年の頃、キャロルにはしたためることが出来なかった帯の言葉も今ならスイスイ言えます。なぜなら十五年の歳月が流れようとしているから・・・父は長崎市の好文堂書店によく通っていましたからそこに御本を陳列されて頂きそれを見に行くのが楽しみでした。娘として誇らしかったのです。いつか、その本が撤去になる日もあるんだ・・・と胆に銘じてはいてもそこに存在することが嬉しかったのです。キャロルが四十七歳の頃の話です。本というマテリアルは何年も掛けて熟成して行くものなのか・・・実に感慨深いのです。