サファイア・マン《かけがいのない男編》〔110〕このときの入院見舞い金に拘るのは人生の綱領が含まれていてとても味わい深いからです。人の思いをあてにすることがどんなに危険かを教えてくれるし、伯母はどんな気持ちで、和田家と付き合っていたかが、手に取るように見える。十万円は七万円に収縮され、そのうち三万ずつが父と弟に渡って、ふたりともどうしてもその月に差し迫った支払いを抱えていたのでしょう。細かいことは伯母から聞きました。一万円を預かった父は病室に来てそわそわしているのです。十万円が一万円になったことにさすがの父もうなだれていて、今、検査でいないのよ?っていうとキャロルに預けて帰ってしまうのです。会いたくないな、会えないくらい悪いことしてしまった・・・いないなら帰ってしまいたい!父は子供のように正直で速い行動に出てしまったのです。キャロルはこの一万円をシゲルちゃんに渡さず自分の生活費にしました。バンカーであっても、先のことはわかりません。キャロルは悪い妻かもしれません。しかし一万円を渡すことが妥当かを考慮してそうしたのです。人は誰も依存心を持っている生き物で、この依存心を誰もこれまで話さなかった・・・・そこをキャロルは解説しているのです。