サファイア・マン《面白い男編》〔27〕もてない男の決定版として・・・悪いけどシゲコを取り上げましょう。彼がなぜ、当代随一といわれる悪妻キャロルめを、嫁にしなければならなかったか?ここはカナメになります。キャロルは前々日、四月二日、最愛の人に夜逃げされ、翌日は店を休みます。本当に死にたい!とそう思い、金物店に入りますが、ふたり子供がいたことがハドメになって、なんとか思いとどまり、伯母の家を訪ねるんです。東京まで追い掛けて、決着を付けること、それが念頭にあったのですが、その旅費すらありません。キャロルは翌々日、四月四日、このシゲコが来店したときに側につくんですが、いつも銀行関係者には、ベッピンを揃えるオーナーらしく、一緒についた女性も美女でした。キャロルは寂しかった大きなこころの穴を埋めるべく、安全志向の自分を頭に描き始めていたのです。嘘ばっかりの男にこりごりになった自分と真正面から対峙していたのです。オーナーはキャロルに暗示めいた言葉を囁くんですね、彼はホンモノのチョンガーだ、ひょっとすると、ひょっとするかも?って。キャロルはこのコトバの空気というものに、初めて知り合った、そういう新鮮味があって驚いたんです。まるで、作家みたいなコトバを通常の人々がかもしだすこともあるんだなあって、この時からです。キャロルは、貧富の差異を超えて、素晴らしいコトバを突如として生み出す人間の本来持っている語彙力に気が付くんですね~