ルビー・ウーマン《黎明編》〔4〕敗戦によって、何を学んだかは人それぞれ。母は多かれ、少なかれ、まだ、軍国主義の影響下にあったと。あの時に、確かに玉音放送によって、終結して、帝国海軍の旗は降ろされた。それなのに、16歳までを、軍国主義で彩られた彼女の心象を一度に変えるものは、現れなかった。しかし、兄の変身と、母の急死。しかも母のキミは、往診で来てくれた医師が打った注射が強すぎて、亡くなったというのが、母ミチの鑑定でした。しかし、葬儀のすべてを終えて、帰るときの兄の優しい言葉が彼女のこころに決定打を放ったのです。お前は三姉妹の中で、男にしたいくらい、優秀だった・・・もしもお前が男なら、僕だって負けていたかもしれない、でもなぜ?って考えるんだよ、女に生まれたことは、必ずそこに意味があるはずなんだよ・・・と。西暦1929年、世界恐慌の年に生まれた母にとって、戦いの歳月が一巡して、(今、正に新しい時代が到来しているんだよ!)との兄の言葉は鮮烈だったのです。