あと一時間・・・。父より学年が9歳下の妹のミチについて語ろうね!このミチは、三菱の兵器所にいたにも関わらず、無傷だったんだ。お昼の買出しに出て、建物の死角にいたんだね。でも原爆の町を歩いて矢上まで帰ったからかな、36才で、白血病で亡くなったんだよね。父には、苦い思い出があったんだ。親鸞とゆかりのある京都のお寺の養女の話があって、ミチがすでに行ってるのに、長崎に連れ戻してるんだね。9歳上の兄として、ミチの母〔父の母でもあるタヤ〕に頼まれたのは大きかった。でも、ずっと、こころの中で、済まなかった・・・。そう思い続けてきたっていうんだよ。しかもミチが京都から帰って、じき発病したもので、父には悔恨というより、懺悔に似た気持ちがあったんだね。いつも、キャロに言うのは、妹の歌碑を立てたいって、それが願いなんだって。でも父も、落ちこぼれのキャロと弟。そこまでは、及ばなかった。いつかは必ず、キャロが立てるよ!!ってこのことだけは約束したいなって。叔母の短歌、実は、キャロにも、謝らないといけないことあるんだ。叔母が天国にちゃんと逝けるようにって、キャロが添削してしまった。でも、本来の短歌に今、戻してあげたい。よみびとしらすの本の最後、稲の花 密かに咲くか 田の畦を あゆみてくれば 青草匂ふ これが元々で、キャロがくればを、ゆけばに添削して本に載せたの。ごめんなさい、叔母様!キャロは本当に、無粋で浅はかだった。でも叔母様、あの短歌そのままで、必ず、京都の地に歌碑を作るから、どうかもう安心してくださいな・・・。