ルビー・ウーマン《ジーニアース編》〔91〕母が迷いに迷ってやっと籍を入れたのが四月十六日、キャロルが生まれる三ヶ月前。この辺の母の列記とした迷いが今頃になってキャロルを頭突きします。少女時代の母はどんなお嬢様生活をしていたのか?ここも興味深いですよね。西暦1940年脇田中佐が駆逐艦長の命を受け大阪朝日新聞に載った時、母はまだ十一歳。静岡県御殿場に住んだことがある母の思いを手繰り寄せたくて行きたいというのもあります。弟は行ってるんです。びっくりでしょ?伯母が自衛隊を受験させるためにはるか静岡まで当時十八歳の弟を引率して。なんという先見の明だろうか。頭が下がります。しかし弟は美しいその風景に感動したものの故郷をずっと離れるという決断には至らなかった。思えばキャロルも引っ越してすぐさま選択を迫られます。今で言う、宗教で迷ったのです。浄土真宗系幼稚園とカトリック幼稚園。どちらにも見学に行きますが、この前者の方で、青鼻をたらした園児たちに取り囲まれその粗野さに戦慄を禁じえない。この子達が持っている粗野さは自分が持っている自由さとはちょっとばか違う。それは田舎者のバカジカラ本能でした。キャロルはお行儀よくしていなければいけないカトリックは確かに難儀ではあるけれど、やはり首飾りを頂いた感謝や経緯もあります。母にこう回答します。カトリックに決~めたって。母は階下の全員が浄土真宗系を希望していたこともあり手離しで喜び勇むのです。とにかく階下の連中とは袂を分かちたくはない母のモクロミに便乗したカッコーでキャロルはこころの中で、しまった・・・と思うのです。