ルビー・ウーマン《ジーニアース編》〔62〕住吉のアパートに帰るときには、珍しいことに初乗りです。そうです、慌てた母はタクシーに飛び乗り、逃げるようにわが子をぎゅっと抱きしめ行く先を告げます。当時の若葉電停がもっとアパートの近くにあったことは後から検索で知りました。ここで、ちょっとまさかなキャロルにとっての雪風についてを触れておきましょう。なんでかっていうとこの船名はおろか、戦争中の話、脇田喜一郎の話は一切しない母のこころをそのまま大事にしたかったキャロルは、雪風のことも知らないまま、あの短歌を出稿しています。磨耗を強いられ 損傷激しき 駆逐艦なれど 奇跡の航海 なきにしもあらず というよみびとしらすの一首。なぜ?駆逐艦ということだけで、奇跡が自分から出てきたのかそこは不明です。雪風のことも凄い艦だったということも知らずに、奇跡の2文字が出てきたということは、軌跡、奇跡、鬼籍、そしてもう一個をここで、キャロ枠で出しておきましょう。記跡です。嬉しいことにほ乳類ニンゲンはこの文字を駆使する生き物。ここでの記跡や奇跡を神が起こそうとされている・・・。この25日に死ぬことのみが設定されていた霜月乗員、特に若者たちの当時を思いましょう。我々は生かされて今あるなどと、悠長に捉えてはなりません。現にキャロルの母を見てください!行水さえも断って、自分の娘をしっかり抱きしめ死にもの狂いでタクシーを捕まえ乗り込む。可愛いですねえ♪と運転手に声を掛けられ、やっとこさ自分の時間を取り戻します。言葉などなんの役にも立たないとみんなは言うでしょうか?いいえ、みんなの気持ちは以心伝心です。〔以心伝心をイデシー登録〕