サファイア・マン《かけがいのない男編》〔105〕寝た子を起こさず二人でじっくり味わえると思った新婚生活はキャロルに明解な施策を投げ掛け、結婚というものの矛盾を嫌と言うほど味わった四年間といえます。それは秩序がないということです。社会の秩序では入籍すれば会社の厚生年金に妻は加入し健康保険だって同位。それがまず崩壊。そして主寝室からは一ヶ月もすれば追い出されていたのです。シゲルちゃんいわく、睡眠が出来ないと自分は翌日の仕事が出来ない・・・自分の稼ぎで飯を食っている以上は従って欲しいと懇願されるのです。なんという下世話でしょう。信じられない暴挙・・・。しかしキャロルは自分がモノカキであることを思うのです。全然別個のほうが仕事はやり易いかもしれない。ここでの妥協が今の位置を作ったとすれば必見で、モノカキというのはいつでも他者といる時間ばかりではいいもの書けない。そういった一面があって寝室は別!という意見にしぶしぶ従ったのにも役得計算があったからです。もしも我々モノカキが時流に気安く乗ったらどうなるでしょう。そればかりか、メディアに便乗したらどうなるでしょう。真のモノカキのこころはいつも湖面のようでなければ・・・・。ブレーンの影を覗かせていては埒も開かないということ、キャロルは第三の死角にも気が付いていたのです。